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市街化調整区域にある家は売却できる?売却時に知っておきたいポイントを解説

売却予定の家が「市街化調整区域」という建物の建築が制限されたエリアにある場合、買い手探しに苦労してしまうかもしれません。

一方で市街化調整区域にある家のなかでも、売却しにくいものとしやすいものがあります。

本記事では、市街化調整区域の特徴や売却しにくいといわれる理由、売却するときのポイントなどをわかりやすく解説します。

遠鉄の不動産・浜松ブロック長
石岡 靖雅(いしおか やすまさ)


宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、家族信託コーディネーター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

市街化調整区域とは

市街化調整区域 家

市街化調整区域とは、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」とされている場所です。
市街化調整区域内に建物を建てるためには、原則として所定の条件を満たして開発許可や建築許可を得なければなりません。

一方で市街化調整区域とは反対に、街づくりが推奨されているエリアを「市街化区域」といいます。
都市計画法によると、すでに市街地を形成している区域および、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域が、市街化区域とされています。

市街化調整区域と市街化区域に区分される理由は、都市の急速な発展による弊害を防止するためです。
例えば都市が急速に発展すると、発展に道路の整備が追いつかず渋滞が発生しやすくなり、日常生活だけでなく救急や消防などの活動にも支障が生じることがあります。

そこで市街地が無秩序・無計画に広がらないように、都市計画法により市街化区域と市街化調整区域が線引きされているのです。

市街化調整区域の不動産が売却しにくい理由

市街化調整区域 家

まずは市街化調整区域にある家が売却しにくい理由をみていきましょう。

建物の新築や建て替えに許可が必要

そもそも市街化調整区域では、建物を建てる目的で土地を整備して宅地にするために、所定の基準を満たし自治体から「開発許可」を得なければなりません。

すでに土地のうえに建物があり、宅地としての利用が認められているのであれば、開発許可は不要ですが、建物の新築や建て替えをする際は「建築許可」を得る必要があります。

建築許可を取得するためには、都市計画法第34条で定められる立地基準に適合していなければなりません。
立地基準に適合する建物の例としては、コンビニエンスストアやスーパー、レストランなど日常生活に必要な店舗が挙げられます。

市街化調整区域ではないエリアにある家と比較して、簡単には建物を建てたり建て替えたりできないことが、買い手探しに苦労しやすい主な理由です。

住宅ローンの融資の審査が厳しい

住宅ローンは、取得する土地や建物を担保として貸し付けてくれるお金です。

市街化調整区域の不動産は担保としての価値が低く、返済が滞ったときに差し押さえたとしても売却しにくいため、金融機関から融資の承認を得にくいのが実情です。

農地は特に売却が困難

農地を農地以外のものに転用するためには、転用許可を得なければなりません。
転用をするためには、農地法が定める基準を満たしたうえで、農業委員会に申請をして審議に通過する必要があります。

農地以外への転用が認められない場合、基本的には農家にしか売却ができません。
市街化調整区域にある農地は、都市計画法だけでなく農地法の制約も受けることになるため、売却がさらに困難となります。

市街化調整区域でも売却しやすい家の特徴

市街化調整区域 家

市街化調整区域にある家であっても、以下のいずれかに該当するのであれば売却しやすいといわれています。

  • 市街化調整区域に指定される前に建てられた家
  • 市街化区域に隣接している家

市街化調整区域に指定される前に建てられた家

売却予定の家が市街化調整区域に指定される前に建てられたのであれば、売却できる可能性が高まります。
線引きされる前に建てられた建物は自治体が定める基準を満たせば、第三者が取得した場合も許可を得ることなく建て替えや増築ができるためです。

市街化区域と市街化調整区域に線引きされたのは1970年(昭和45年)ごろですが、エリアによって異なります。
開発許可や建築許可が不要となる条件とあわせて、自治体の担当部署に問い合わせて確認をすると良いでしょう。

建物の建築年月日は、土地登記簿の登記事項証明書や固定資産課税台帳の写しなどで確認できます。

市街化区域に隣接している家

市街化調整区域において開発許可や建築許可を得るためには、都市計画法が定める「立地基準」を満たす必要があります。

例えば売却を予定している家が以下を満たすエリアにある場合は、許可を得られる可能性が高まるため買い手が見つかりやすくなります。

  • 市街化区域に隣接または近接している
  • 市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる
  • 市街化区域にあるものも含みおおむね50以上の建築物が連たんしている
    ※参考:都市計画法第34条

ただし市街化区域に隣接していても、必ず許可を得られるわけではありません。
建物の建て替えやリフォームなどをする際は許可を得る必要があり、希望が叶わない可能性があることを買主に伝え、トラブルが発生しないように努めることが大切です。

市街化調整区域の家を売却するときのポイント

市街化調整区域 家

市街化調整区域にある家を少しでも売れやすくするために知っておきたいポイントや、売却できなかったときの活用方法をご紹介します。

市街化調整区域のメリットを知る

市街化調整区域にある家には、以下のメリットがあります。

  • 価格が割安
  • 住環境が比較的静か
  • 都市計画税がかからない など

市街化調整区域にある家を売却するときは、上記のようなメリットがあることを購入希望者にアピールすると良いでしょう。

購入しやすい人の特徴を知る

市街化調整区域にある家を売却するときは、買ってくれそうな人を探すことが重要です。

購入しやすい人の例として、家の隣にある土地を所有している人が挙げられます。
例えば隣地の所有者が農家であれば、購入してくれる可能性があります。
農業を営む人が建てる農業施設や住宅であれば、許可が不要であるためです。

また隣地の所有者が商店やスーパーなどを営んでいるのであれば、来客用の駐車場として利用するために購入してくれるかもしれません。

市街化調整区域の売却実績が豊富な不動産会社に依頼する

市街化調整区域にある家を売却するときは、不動産会社の協力が不可欠です。
開発許可または建築許可を得るための要件や、許可が不要となるケースを把握していないと、買い手を見つけるのが困難になります。。

また市街化調整区域にある不動産を購入しやすい人を探すときは、不動産会社が把握している地域の情報が役に立ちます。

地域の情報に精通した不動産会社に相談をすることで、スムーズに買い手を見つけやすくなるでしょう。

売却できないときは「活用」も検討する

不動産会社に依頼をしても売却が困難な場合は、売却せずにご自身で活用するのもひとつの方法です。

例えば家を解体して、コインパーキングを設置する方法があります。
市街化調整区域は、人口が多い傾向にある市街化区域の付近にあるため、コインパーキングを設置することで安定した賃料収入を得られる可能性があります。

また駐車場を運営するための設備を設置するだけで始めることができ、建物を建てるわけではないため、開発許可や建築許可は不要です。

ただし需要がなければ、コインパーキングを設置しても収入は得られません。
駐車場としての活用を検討するときは、需要があるかどうかを含めて、不動産会社に相談してみるのはいかがでしょうか。

【まとめ】市街化調整区域にある家を売却するときは専門家に相談しよう

市街化調整区域では建物の建設が制限されており、一般的な住宅は基本的に建築できないため、売却しにくいといわれています。

一方で「市街化調整区域に指定される前に立てられた家」や「市街化区域に隣接した家」であれば、売却できる可能性が高まります。

家が市街化調整区域にある場合、売却をするためには法律や条令などの専門知識が不可欠です。
そのため売却を検討している方は、市街化調整区域にある不動産の売却実績が豊富な不動産会社に協力を依頼すると良いでしょう。
(執筆者:品木 彰)

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