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修繕積立金とは?相場や値上がりの可能性、値上げの理由を徹底解説

マンションを購入したあとは、住宅ローンの返済と合わせて管理費や修繕積立金を支払うのが一般的です。
マンション購入時に修繕積立金の額しか確認していないと、居住開始から数年後に値上げされて家計を圧迫する恐れがあります。

本記事では、修繕積立金の相場や値上がりするケースなどをわかりやすく解説していきます。

遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)


宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級

マンションの修繕積立金とは?

修繕積立金

修繕積立金とは、マンションの建物部分や設備などを修繕する資金を賄うために、入居者から毎月徴収するお金です。

分譲マンションでは、長期修繕計画にしたがって10〜15年のサイクルで「大規模修繕」が実施されます。
大規模修繕では、壁や屋上、廊下などの共用部分を修繕するため、場合によっては数千万円ほどの費用がかかります。

賃貸住宅の場合、建物の修繕費用はオーナーが負担するのが一般的です。
しかし分譲マンションの場合は、区分所有者が協力して建物を維持・管理しなければなりません。
そこで区分所有者から修繕積立金を毎月徴収し、大規模修繕に備えて計画的に積み立てておくのです。

なお修繕積立金のほかにも、入居時に支払う数十万円程度の「修繕積立基金」も、マンションの修繕費用に充てられます。

修繕積立金の相場はどれくらい?

修繕積立金

国土交通省の調査によると、2018年(平成30年)における修繕積立金の平均は月額11,243円/戸です。
※出典:国土交通省「平成30年度 マンション総合調査

同調査によると、1999年(平成11年)の修繕積立金の平均額は7,378円であるため、19年で3,865円値上がりしています。

修繕積立金が上昇したのは、国土交通省が2008年にマンションの長期修繕計画のガイドラインを発表したためでしょう。
ガイドラインに沿って、多くのマンションが長期修繕計画を見直し、修繕積立金を適正な額に算出し直した結果、相場が上昇したと考えられます。

修繕積立金は値上がりする?

修繕積立金

修繕積立金は、ずっと同じ金額であるとは限りません。

修繕積立金の額は、長期修繕計画にもとづいて算出された概算額です。
大規模修繕を実施するために修繕費用の見積もりを取った結果、工事の際に資金不足が想定される場合は、修繕積立金の値上げが検討されるのです。

またマンションによっては「段階増額積立方式」を採用しており、数年単位で修繕積立金が増額される場合もあります。

マンションを購入する際は、修繕積立金の金額だけでなく値上げの予定についても確認すると良いでしょう。

修繕積立金が値上がりする理由

修繕積立金

修繕積立金が値上がりする理由は、主に以下の3点です。

  • 分譲開始時の金額が低い
  • 修繕費の相場が上昇する
  • 計画にない修繕が実施される

金額の初期設定が低い

マンションによっては、修繕積立金の初期設定額が、大規模修繕から考えた金額よりも低く設定されている場合があります。

例えば段階増額積立方式を採用しているマンションは、築年数が浅いうちは修繕積立金の額が低いですが、築年数の経過にともなって徐々に金額が増えていきます。

また国土交通省がガイドラインを発表する前に建てられた中古マンションは、初期の修繕積立金額が低いことが多く、不足分を補うために値上がりするかもしれません。

新築や築浅のマンションであっても、修繕積立金が極端に安い場合や、まったく徴収されない場合には注意が必要です。

建物や設備は必ず経年劣化するため、マンションにとって大規模修繕は避けられません。
修繕積立金が著しく低いマンションは、将来的に値上げされる可能性が高いだけでなく、大規模修繕の前に一括徴収される可能性もあります。

マンションを選ぶときは、修繕積立金の額が妥当であるか考えることが大切です。

修繕費の相場が上昇

長期修繕計画を立てた当初の想定よりも、実際の修繕費用が値上がりしていた場合、修繕積立金が増額される可能性があります。

大規模修繕では、材料費や人件費などのコストがかかります。
物価が上昇すると、修繕に必要な資材を調達するコストや、設備の調達コストも上昇するのが一般的です。
また少子高齢化によって労働人口が減少すると、人件費が上昇するかもしれません。

マンションの大規模修繕費用は、さまざまな要因で高騰するため、修繕積立金の額が妥当であっても将来的に増額される可能性があるのです。

計画にない修繕が実施される

長期修繕計画にはない工事の実施が決まると、入居者から徴収する修繕積立金が増える場合があります。

例えばマンションの入居者が高齢化したため、長期修繕計画にはないバリアフリー工事をすることになった場合、工事費用を賄うために修繕費用が値上がりするかもしれません。

また地震や台風など大規模な自然災害の発生により、マンションが損害を負った場合、修繕積立金から修繕費用が賄われることがあります。

修繕積立金を自然災害の修復に充てた結果、予定している大規模修繕の費用が不足すると想定される場合、修繕積立金が値上げされるのです。

修繕積立金は返金されない

修繕積立金

「大規模修繕をする前にマンションを売却すると、修繕積立金が返還されるのでは?」と考える方がいます。

しかし残念ながら大規模修繕をする前に退去しても、それまで積み立てられた修繕積立金は戻ってきません。
修繕積立金を退去者に返還すると、大規模修繕の費用を積み立てるのが困難になる恐れがあるためです。

マンションを売却した区分所有者が支払った修繕積立金は、返還されることなく将来実施される大規模修繕の費用に充てられるのです。

修繕積立金が返還されない旨は、マンションの管理規約に明記されています。

修繕積立金と管理費の違い

修繕積立金

修繕積立金と管理費は、どちらもマンションの入居者が支払う金銭ですが、使いみちが異なります。

修繕積立金は、名前のとおり建物や設備を修繕するために積み立てる金銭です。
大規模修繕や、給排水管や受水槽の取替工事、地震や台風などによる損害の修繕などを実施する際は、積み立てた金銭が必要に応じて取り崩されます。

管理費は、住民が快適に暮らせるよう、マンションを維持管理するために必要な費用に充てられます。
例えば、エレベーターやエントランス、廊下などの共用部分の水道光熱費や、会社への委託費、管理組合の運営費などは、入居者から集めた管理費で賄われているのです。

管理費については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

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【まとめ】マンション購入前に修繕積立金の意味と適正相場を理解しよう

マンションの修繕積立金は、将来的に実施される大規模修繕や設備交換などの費用を賄うために徴収されます。

修繕積立金が安価なマンションを購入したり、長期修繕計画にない修繕が行われたりすると、将来的に値上げされる可能性があります。
数年ごとに修繕積立金が段階的に値上げされるマンションも珍しくありません。

修繕積立金の額を確認するだけでなく、将来的に金額が上昇する可能性や上昇時に家計を圧迫しないか考えることも、マンションを購入する際に大切な点であるといえます。
(執筆者:品木彰)

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