中古マンションの購入後に支払うランニングコストのひとつに「固定資産税」があります。
マンション購入に向けた資金計画を立てる際は、固定資産税について理解しておくことが大切です。
本記事では、中古マンションの固定資産税の計算方法や適用される可能性がある軽減措置について解説します。

遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)
宅地建物取引士
中古マンションの購入後は毎年「固定資産税」を支払う
固定資産税は、毎年1月1日時点で建物や土地などを所有する人に課せられる税金です。
自治体(各市町村)が算出する土地と建物の価格である「固定資産税評価額」をもとに算出されます。
固定資産税は、土地と建物の税額を別々に計算します。
マンションの場合、土地部分は所有者全員で共同所有をしているため、区分所有者は土地の持ち分割合に応じた固定資産税を負担しなければなりません。
土地部分の固定資産税評価額は、国が算出する土地価格である「公示価格」の70%です。
建物部分は、建物を再建築したときの価格の50〜70%程度に設定されます。
また建物部分の評価額を計算する際は、経年劣化の影響で失われた価値が加味されます。
市街化区域内では「都市計画税」も課せられる
購入した中古マンションが市街化区域にある場合は、固定資産税と合わせて「都市計画税」も納める必要があります。
市街化区域とは、都市計画法によって指定される「都市計画区域」のひとつです。
すでに住宅や商業施設が多数あり市街地として栄えているエリアや、およそ10年以内に市街化を進める予定であるエリアを指します。
固定資産税の計算方法
固定資産税と都市計画税は「課税標準額 × 税率」で計算されます。
課税標準額は、土地と建物の固定資産税評価額をもとに決まります。
固定資産税の標準税率は、1.4%です。
ただしお住まいの市区町村によっては税率が異なる場合があります。
都市計画税の税率は、原則として0.3%です。
固定資産税評価額と固定資産税課税標準額の違い
建物の場合、固定資産税評価額と課税標準額は基本的に同じです。
土地については、固定資産税の負担を軽減する措置や負担調整率などが適用されて、固定資産税評価額よりも課税標準額のほうが低くなることがあります。
固定資産税の軽減措置
中古マンションの場合、土地部分の固定資産税に軽減措置や負担調整率が適用されて税額が安くなる場合があります。
土地部分の軽減措置
マンションをはじめとした人が住むための建物がある敷地には、所定の要件を満たすと固定資産税と都市計画税の計算時に「住宅用地の特例」が適用されます。
特例が適用される場合、以下のとおり一定の面積まで減額率が適用されて、土地部分の固定資産税が計算されます。
固定資産税 | 都市計画税 | |
200㎡までの部分
(小規模住宅用地) |
1/6 | 1/3 |
200㎡超の部分
(一般住宅用地) |
1/3 | 2/3 |
負担調整率
負担調整率は、固定資産税額が前年よりも大幅に上昇したり低下したりするのを抑えるときに用いられます。
土地の固定資産税評価額は、3年に1度のタイミングで評価替えが行われます。
仮に土地の価格が高騰しており、評価替えのタイミングで固定資産税評価額が大幅に上昇すると、納税する人の負担が急激に増えてしまうかもしれません。
そこで固定資産税の負担が大幅に上昇することのないよう、以下のとおり前年度の固定資産税課税標準額に負担調整率をかけて、今年度の課税標準額を計算することがあります。
- 今年度の課税標準額=前年度の固定資産税課税標準額 × 負担調整率
中古マンションの固定資産税をシミュレーション
中古マンションの購入後に支払う固定資産税は、いくらほどになるのでしょうか。
モデルケースを用いて、税額をシミュレーションしてみましょう。
共通の条件は、以下のとおりです。
- 土地の所有面積:200㎡未満
- 建物の専有面積:80㎡
- 固定資産税の税率:1.4%(標準税率)
土地部分については、すべてが住宅用地の特例の対象であり、税額の計算時に固定資産税評価額が1/6になるとします。
またシミュレーションに用いる固定資産税評価額は、静岡県浜松市における事例等をもとにした概算値であるとします。
築15年・固定資産税評価額:土地500万円・建物930万円
築15年、固定資産税評価額が土地500万円、建物930万円の中古マンションを購入したときの固定資産税を計算します。
- 土地部分の税額:500万円×1.4%×1/6=11,666円
- 建物部分の税額:930万円×1.4%=130,200円
- 固定資産税額=11,666円+130,200円=141,866円
計算の結果、固定資産税額は141,866円となりました。
築30年・固定資産税評価額:土地500万円・建物460万円
次に築30年、固定資産税評価額が土地500万円・建物460万円である中古マンションの税額をシミュレーションしてみましょう。
- 土地部分の税額:500万円×1.4%×1/6=11,666円
- 建物部分の税額:460万円×1.4%=64,400円
- 固定資産税額=11,667円+64,400円=76,066円
シミュレーションの結果、固定資産税額は76,066円となりました。
中古マンションの固定資産税は一戸建てよりも高い?
一概にはいえませんが、購入価格が同じであれば一戸建て住宅よりもマンションのほうが固定資産税は高くなることがあります。
一戸建て住宅よりもマンションのほうが、購入価格に占める土地部分の割合が少ないことがあるためです。
土地部分の固定資産税は、所定の要件を満たすと住宅用地の特例が適用されて、税額が最大1/6となります。
購入価格に占める土地部分の割合が少ないと、住宅用地の特例が適用される範囲も少なくなるため、マンションは一戸建て住宅よりも固定資産税額が高くなることがあるのです。
【まとめ】中古マンションを検討するときは固定資産税も確認しよう
中古マンションを購入したあとは、毎年固定資産税を支払っていくことになります。
マンションが市街化区域にある場合は、都市計画税も合わせて支払わなければなりません。
中古マンションを購入する際は、住宅ローンの返済額や管理費、修繕積立金などに加えて、固定資産税や都市計画税の税額も確認し、問題なく支払えるか考えましょう。
とはいえ、固定資産税の税額は築年数や床面積などさまざまな要素で異なります。
物件を検討する際は、マンションの販売価格だけでなく固定資産税の税額の目安も不動産会社に確認しておくと安心です。
(執筆者:品木 彰)