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住宅ローン控除の上限額について解説!実際の控除額はどれくらい?

「住宅ローン控除を利用すると、どのくらい税負担が軽減できるのだろう」
「住宅ローン控除の上限額が知りたい」

住宅ローンを組んだ方は、住宅ローン控除を申請することで所得税や住民税の負担軽減が受けられます。
ただし住宅ローン控除には上限があるため、借入額が同じでも実際の控除額は個人によって異なる場合があるのです。

本記事では、住宅ローン控除の上限額や控除額の計算方法を解説していきます。

遠鉄の不動産・浜松北ブロック長 恒吉 俊哉(つねよし しゅんや)


宅地建物取引士

住宅ローン控除の概要と上限額

住宅ローン控除 上限

住宅ローン控除とは、年末時点における住宅ローン残高に応じた金額を所得税から控除してくれる制度です。

所得税額が控除額よりも低い場合、余った控除額は住民税から控除されます。

控除額は「年末時点の住宅ローン残高×控除率」です。
税制税制改正により、2022年1月以降は控除率が1.0%から0.7%に引き下げられました。

控除期間については、改正前は最長10年であり、消費税10%である住宅を取得して所定の要件を満たした場合には13年に延長されました。

改正後の控除期間については、以下のとおり住宅の種類ごとに決められています。

  • 新築住宅・買取再販の中古住宅(要件を満たすもの):13年
  • 中古住宅(既存住宅):10年

控除額の上限は、改正前は年間40万円(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅を取得した場合は年間50万円)でしたが、改正後は住宅の種類や入居したタイミングによって細かく分けられています。

〇新築住宅・買取再販の控除額の年間上限額(借入限度額×控除率)

2022〜2023年に入居 2024〜2025年に入居
長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円×0.7%=35.0万円 4,500万円×0.7%=31.5万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円×0.7%=31.5万円 3,500万円×0.7%=24.5万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円×0.7%=28.0万円 3,000万円×0.7%=21.0万円
その他の住宅 3,000万円×0.7%=21.0万円 2,000万円×0.7%=14.0万円

※2023年までに新築の建築確認がされていた場合のみ

〇既存住宅の控除額の年間上限額(借入限度額×控除率)

2022〜2025年に入居
長期優良住宅・低炭素住宅

ZEH水準省エネ住宅

省エネ基準適合住宅

3,000万円×0.7%=21万円
その他の住宅 2,000万円×0.7%=14万円

環境性能が一定の基準を満たしている住宅は、控除額の上限が高くなります。

住宅ローン控除を受けるためには、購入する物件の床面積や住宅ローンの返済期間などさまざまな要件を満たさなければなりません。

住宅ローン控除の詳細は、以下の記事にまとめてありますので、ぜひご覧ください。

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住宅ローン控除 条件

実際の控除額はいくら?

住宅ローン控除 上限

取得した住宅に入居するタイミングが2022年1月から2025年12月末までの場合、住宅ローン控除の控除額は、以下のうちもっとも低い金額となります。

  • 年末時点における住宅ローン残高の0.7%
  • 所得税額+住民税額
    ※所得税から控除しきれない場合、翌年の住民税から控除される金額の上限は97,500円
  • 最大控除額(借入限度額×控除率)

例えば年末時点における住宅ローン残高の0.7%が21万円、所得税額と住民税額の合計が20万円である場合、控除額は20万円となり余った1万円は消滅します。

住宅ローン控除の金額をシミュレーション

住宅ローン控除 上限

ここでは、住宅ローン控除額をシミュレーションで確認していきましょう。
条件は、以下の通りです。


  • 家族構成:夫、妻(扶養内)、子ども(16歳未満)
  • 借入額:3,000万円
  • 返済期間:35年
  • 借入金利:1.5%(全期間固定金利)
  • 返済方法:元利均等返済(毎月の返済額が一定)
  • ボーナス返済:なし
  • 返済開始月:2023年1月
  • 返済する人:夫
  • 取得する住宅:長期優良住宅(新築)

以上の条件で、年収ごとの控除額を試算していきます。

年収が400万円の場合

年収が400万円の場合、控除額は以下の通りです。

1〜9年目:各16.3万円
10年目:16.0万円
11年目:15.5万円
12年目:15.0万円
13年目:14.4万円
合計:207.6万円

1年目から9年目までは「(所得税額+住民税額)<年末残高の0.7%」であるため、控除額は、所得税額+住民税額である16.3万円です。
10年目以降は「年末残高の0.7%>(所得税額+住民税額)」となるため、控除額は年末残高の0.7%となります。

また住宅ローンの返済が進んでいくとともに、控除額も年々減少していきます。

年収が500万円である場合

年収が500万円に増えると、住宅ローン控除額は以下のように変化します。

1〜2年目:各19.8万円
3年目:19.5万円
4年目:19.1万円
5年目:18.6万円
6年目:18.1万円
7年目:17.6万円
8年目:17.1万円
9年目:16.6万円
10年目:16.0万円
11年目:15.5万円
12年目:15.0万円
13年目:14.4万円
合計:227.1万円

年収500万円の場合、1〜2年目までは「(所得税額+住民税額)<年末残高の0.7%」であるため、控除額は所得税額+住民税額の19.8万円です。
3年目以降は「(所得税額+住民税額)>年末残高の0.7%」となり、控除額は年末残高の0.7%となるため、年々減少していきます。

また年収400万円と比較すると、控除額は約20万円増えました。

年収が700万円である場合

年収が700万円になると、住宅ローン控除額は以下の通りです。

1年目:20.5万円
2年目:20.0万円
3年目:19.5万円
4年目:19.1万円
5年目:18.6万円
6年目:18.1万円
7年目:17.6万円
8年目:17.1万円
9年目:16.6万円
10年目:16.0万円
11年目:15.5万円
12年目:15.0万円
13年目:14.4万円
合計:228.0万円

年収が700万円の場合、すべての控除期間で「(所得税額+住民税額)>年末残高の0.7%」になるため、控除額はすべて年末残高の0.7%です。

年収400万円の方と比較すると、控除額は約20万円高くなりましたが、年収500万円との差はあまりありません。

住宅ローン控除額を計算する際の注意点

住宅ローン控除 上限

ここでは、住宅ローン控除額を計算する際の注意点を2つご紹介します。

借換えをする場合の注意点

返済の途中で住宅ローンを借換えた場合も、要件を満たしていれば住宅ローン控除を受けられます。
ただし借換えをしても、住宅ローン控除の控除期間が延長されることはありません。
控除期間は、購入した住宅に居住を開始した年から10年または13年であるためです。

例えば、5年目に住宅ローンを借換えた場合、住宅ローン控除を受けられる期間は残り9年となります。

また、借換えた年の控除額は「A.借換え直前における当初の住宅ローン等の残高」と「B.借換えによる新たな住宅ローン等の借入時の金額」の関係性によって異なります。

BがAより少ないもしくは同額である場合、住宅ローン控除の計算対象となるのは「C.借換えによる新たな住宅ローン等の年末残高」です。
一方で、借換え時の諸費用も含めて借入れた結果、BがAよりも多くなった場合、借換えた年の控除額の計算対象となるのは「C×A/B」の計算式で求められます。

ふるさと納税と併用する場合の注意点

特定の自治体に寄付をする「ふるさと納税」は、寄付金額から2,000円を引いた金額が控除の対象となって税負担を軽減できる制度です。

ふるさと納税は、住宅ローン控除と併用可能です。

ただし、ふるさと納税を申告する際にワンストップ特例制度を利用せず、確定申告をする場合、住宅ローン控除額が減る場合がある点に注意しましょう。
ワンストップ特例制度でふるさと納税を申告する場合、控除額の全額が住民税から差し引かれます。

また、ワンストップ特例制度は住宅ローン1年目については利用することができません。
住宅ローン借り入れ1年目の人は住宅ローン控除を受けるために、必ず確定申告をしないと
いけません。
そのため、ワンストップ特例制度が使える「確定申告をする必要のない旧所得者など」の条件に当てはまらなくなるためです。

しかし確定申告でふるさと納税を申告すると、所得税と住民税の両方から一定金額が控除されます。

住宅ローン控除は、所得税から優先的に控除される制度です。
例えば、住宅ローン控除の適用により所得税額が0円となる人が、確定申告でふるさと納税を申請してしまうと、所得税の節税効果が薄れてしまいます。

住宅ローン控除とふるさと納税の併用については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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住宅ローン控除の申請方法

住宅ローン控除 上限

住宅ローン控除を申請する場合、初年度は職業にかかわらず確定申告をしなければなりません。
確定申告をする際は「確定申告書」や「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」などの書類を揃える必要があります。

会社員や公務員などの給与所得者は、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を申請可能です。

確定申告や年末調整で住宅ローン控除を申請する方法は、以下の記事をご確認ください。

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まとめ

住宅ローン控除は、控除額に上限が存在するため、必ずしも年末残高の0.7%分の節税効果が得られるわけではありません。

実際の控除額は、控除を受ける人の所得税額や住民税額、住宅ローンの借入額など、さまざまな要素で異なります。

住宅ローン控除を受けると、どのくらい節税効果を得られるのか知りたい方は、信頼できる不動産会社や税理士のような専門資格者に相談するのも方法のひとつです。
(執筆者:品木彰)

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