住宅ローンを組んで家を購入するときは、要件を満たせば「住宅ローン控除」が受けられます。
しかし住宅ローン控除は内容が複雑なうえに、コロナウイルスの影響で税制改正されたこともあり、十分に理解できていない人も多いでしょう。
この記事では「住宅ローン控除の額はいくら?」「年収制限はある?」とお悩みの方に、制度を利用するための要件について解説します。
年収・借入額別に見た「住宅ローン控除の金額早見表」も掲載しているので、ぜひ参考にしてください。

遠鉄の不動産・中遠ブロック長 山本 圭吾(やまもと けいご)
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、相続支援コンサルタント、相続診断士、アシスタント・カラーコーディネーター、AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して家を購入したり、増改築したりする際に受けられる減税制度です。
年末の「住宅ローン残高」の1%が所得税から直接控除される仕組みで、所得税から控除しきれなかった額については、一定額を上限として翌年の住民税より控除が可能です。
控除期間
住宅ローン控除が受けられる期間は、通常10年間です。
しかし消費税が10%に増税されたことを機に、控除期間を13年へ延長する特例措置が取られました。
また13年の延長の特例措置については、コロナウイルスの影響によりさらに適用期間が延長されています。
当初は令和3年中の入居が条件でしたが、追加された契約時期の要件を満たせば、令和4年中の入居でも控除期間が13年まで延長されます。
控除額
住宅ローン控除額の算出方法は、次のとおりです。
- 1〜10年目:「年末時点における住宅ローン残高の1%」
- 11〜13年目:「年末時点における住宅ローン残高の1%」または「建物購入価格の2%÷3」のいずれか少ない金額
年間最大控除額の上限は40万円です。
ただし、低炭素住宅や長期優良住宅などの「認定住宅」取得時の上限は50万円です。
住宅ローン控除の条件についての詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
住宅ローンを組んでマイホームを購入しても、住宅ローン控除を受けられるとは限りません。 住宅を購入した人や住宅ローンの借入条件、建物の床面積など、住宅ローン控除にはさまざまな適用要件が設けられているためです。 要件を把握せずに[…]
住宅ローン控除は、令和4年(2022年)の税制改正で利用できる期限が延長されました。 住宅ローン控除とは、消費税増税にともなう税負担を軽減する制度です。 所得税からの控除が受けられるため、マイホーム購入者にとってメリットの大きな[…]
【年収・借入金額別】住宅ローン控除額早見表
住宅ローン控除額は、年収やローンの借入金額によって変わります。
次の条件において「年収・借入金額別の住宅ローン控除額」をシミュレーションしましたので、参考にしてください。
【世帯構成】
- 夫:会社員
- 妻:配偶者控除対象
- 子ども:なし
【住宅購入情報】
- 一般住宅
- 建物は消費税10%で購入し、2021年1月に入居開始
【住宅ローンの借入条件】
- 返済期間:35年(元利均等返済)
- 金利:1.3%(全期間固定金利)
住宅ローン控除の額 | 2,000万円 | 2,500万円 | 3,000万円 | 3,500万円 |
年収400万円 | 202万円 | 214万円 | 214万円 | 214万円 |
年収500万円 | 213万円 | 265万円 | 295万円 | 306万円 |
年収600万円 | 213万円 | 266万円 | 320万円 | 362万円 |
年収700万円 | 213万円 | 266万円 | 320万円 | 373万円 |
年収800万円 | 213万円 | 266万円 | 320万円 | 373万円 |
(単位:千円以下切り捨て)
※借入額と建物購入価格は同額としてシミュレーションしています。
※住宅ローン控除額は「1~13年間の総額」です。
上記のシミュレーションを見ると、借入額や返済条件が同じにも関わらず年収によって控除額に差があることがわかります。
これは住宅ローン控除が、所得税より直接控除される仕組みだからです。
年収が高ければ所得税の額も多くなり、その分控除できる金額が増えます。
一方、年収が低ければ所得税の額も少なくなるため、控除額が所得税額を上回るケースもでてきます。
所得税で控除しきれなかった分は翌年の住民税より控除可能ですが、この場合は上限額が136,500円と決められているため、場合によっては全額控除できないこともあるのです。
住宅ローン控除を受けるための年収制限は?
住宅ローン控除が受けられるかどうかは、年収ではなく「合計所得金額」で判断されます。
合計所得金額とは、給与所得控除などを差し引いた課税対象となる所得のことです。
住宅ローン控除を受けるためには「控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること」が条件です。
ここで言う合計所得金額とは、総合課税の対象となる総所得金額と、分離課税の対象となる所得金額を合わせた総額のことです。
- 給料などの総所得金額
- 株式の配当に係る利子所得や配当所得
- 株式の譲渡所得
- 先物取引の雑所得
- 不動産の譲渡所得(特別控除前の金額)
- 山林所得
- 退職金所得
上記を合わせた合計所得金額が3,000万円以下なら、住宅ローン控除の対象となります。
合計所得金額が3,000万円を超えた年以降は?
住宅ローン控除適用中に合計所得金額が3,000万円を超過した年は、控除の対象外となります。
しかし、翌年以降に合計所得金額が3,000万円以下となった年については、再び住宅ローン控除の対象となります。
詳しくは、国税庁の「合計所得金額3,000万円の判定」を参照してください。
令和3年度の税制改正による控除期間13年延長分の年収制限
住宅ローン控除については、コロナウイルス蔓延による入居遅れを考慮して、所定の条件を満たした場合に限り、「控除期間13年の措置の延長」が認められます。
また今回の特例措置では、所得制限を設けたうえで「床面積」についても緩和要件が追加されています。
通常は床面積50㎡以上が控除対象のところ、控除期間13年の措置の延長分についてのみ「床面積40㎡以上」から控除が受けられます。
ただし、床面積40㎡以上50㎡未満の控除対象者は「合計所得金額が1,000万円以下」の人です。
住宅ローン控除を受けられる条件
ここでは、住宅ローン控除を受けるための条件について解説します。
住宅ローンに関する条件
住宅ローン控除を受けるためには、対象となる住宅のローンが10年以上あることが条件です。
住宅ローンは、銀行などの金融機関のほか勤務先からの融資(利子に条件あり)も対象となりますが、親族や知人から借りた金銭は対象外です。
住宅に関する条件
住宅ローン控除を受けるための、住宅に関する主な条件は次のとおりです。
- 住宅を新築した日または購入した日から6か月以内に居住している
- 住宅ローン控除の適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住している
- 登記簿に記載の床面積が50㎡以上かつ、床面積の半分以上が居住用である
上記は、新築住宅に関する適用条件の一部です。
居住する家が「新築・中古・リフォーム」などにより、それぞれ条件が異なる項目があります。
住宅ローン控除の条件についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
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住宅ローン控除を受けるためには
住宅ローン控除を受けるためには「確定申告」と「年末調整」の2つの方法があります。
1年目は確定申告を忘れずに!
住宅ローン控除を受ける最初の年は、事業所得者・給与所得者を問わず確定申告をしなければなりません。
会社員や公務員などの給与所得者の場合、通常は勤務先が年末調整にて税金の清算を行います。
しかし住宅ローン控除を受けるにあたっては、給与所得者であっても初年度は確定申告が必要です。
住宅ローン控除の確定申告についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
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2年目以降は確定申告または年末調整
事業所得者など所得税を確定申告する人は、2年目以降についても、住宅ローン控除も併せて確定申告しましょう。
一方給与所得者の場合は、2年目以降の確定申告は不要です。
住宅ローン控除を受けるための必要書類を勤務先に提出すれば、会社が年末調整にて清算してくれます。
住宅ローン控除の年末調整についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
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まとめ
住宅ローン控除を受けるためには「控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下」であることが条件です。
控除の金額は年収や借入額によって変わるため、早見表を参考にシミュレーションしてみるとよいでしょう。
住宅ローン控除に関する、主な概要は次のとおりです。
- 住宅ローン控除が受けられる期間は通常10年間
- 規定の要件を満たせば13年の特例措置の対象となる
- 住宅ローン控除を受けるためには、控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 対象となる住宅のローンが10年以上あること
- 契約時期の要件を満たせば、令和4年12月末までの入居でも控除期間が13年まで延長される
- 「控除期間13年の措置の延長分」の面積緩和要件には「合計所得金額が1,000万円以下」の制限あり
住宅ローン控除を受けるためには、初年度についてはすべての人に確定申告が必要です。
必要な書類を準備し、忘れないように申告しましょう。
(執筆者:茶谷利津子)