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法人が不動産売却をしたときにかかる税金は?個人との違いを比較!

法人名義の不動産を売却して得た利益は、法人税や法人住民税などの課税対象です。
また法人と個人では、不動産売却の利益に対する税金の計算方法が異なります。

本記事では、法人が不動産を売却したときに課せられる税金の種類や計算方法、法人と個人の税制の違いを解説します。

遠鉄の不動産・浜松ブロック長
江間 和彦(えま かずひこ)


宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士

法人が不動産売却をした際に発生する税金

法人が不動産を売却した際に発生する税金は「法人税」「法人住民税」「法人事業税」「地方法人税」の4種類です。
また、消費税が課せられる場合もあります。

法人税

法人税とは、株式会社や協同組合などの法人が事業活動で得られた所得に対して課せられる税金です。

法人税の計算方法

法人税は「課税所得×税率」で計算します。

法人税の課税対象となる所得は、税金を計算するときの基準となる収益である「益金」から、同じく基準である費用の「損金」を差し引いて計算します。
益金と損金に該当するものは、それぞれ以下のとおりです。

  • 益金:商品や製品などを販売して得た売上よる収入・土地や建物の売却で得た収入
  • 損金:原材料費・人件費、災害による損失 など

法人税の税率

法人税の税率は、法人の種類や資本金額などで変わります。
事業開始が平成31年(2019年)4月1日以後である場合、普通法人(株式会社・合名会社など)の法人税率は以下のとおりです。

税率
資本金1億円以下の法人など 年800万円以下の部分 15%

(適用除外事業者※は19%)

年800万円超の部分 23.20%
上記以外の普通法人 23.20%

※参考:国税庁「No.5759 法人税の税率
※適用除外事業者とは、その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人

法人住民税

法人住民税とは、法人の事業所がある地方自治体に納める税金です。
法人税が国に納める国税であるのに対し、法人住民税は地方税に該当します。

また法人住民税は、都道府県に納める「都道府県民税」と市町村に納める「市町村民税」の2種類があります。

法人住民税の計算方法

法人住民税の計算式は「法人税割+均等割」です。

法人税割は、法人税額に所定の税率をかけて算出します。
均等割は、法人の資本金や従業員数などに応じて納税額が決まるため、所得の金額にかかわらず定額です。

法人税割の税率や均等割の金額は、自治体によって異なります。

法人住民税(法人税割)の税率

東京都の場合、法人住民税の税率は、超過税率と標準税率の2種類に分かれています。
株式会社や合名会社などの普通法人の場合「資本金の額または出資金の額が1億円超」であると超過税率が適用されます。
※資本金の額または出資金の額が1億円を超えていなくても、法人税額または個別帰属法人税額が年1,000万円超であれば超過税率の対象です。

また東京都における法人住民税の税率は、以下のとおりです。

〇令和元年(2019年)10月1日以後に開始する事業年度における法人税割の税率

事業所の所在地 標準税率 超過税率
23区内 7.0 10.4
市町村(23区外) 1.0 2.0

※参考:東京都主税局「法人事業税・法人都民税

一方ですべての自治体が、超過税率と標準税率を採用しているわけではありません。

例えば事業所が静岡県静岡市にある場合、令和元年(2019年)10月1日以後に開始する事業年度の税率は、一律7.0%(法人県民税1.0%・法人市民税6.0%)です。
※出典:静岡県公式ホームページ「県民税」・ 静岡市「法人住民税

法人事業税

法人事業税は、法人が行う事業に対して課税される税金です。
法人住民税と同じく、地方税に分類されます。

法人事業税の計算方法

法人事業税の計算式は「課税所得(課税標準額)×法人事業税率」です。
税率は、資本金や出資金の額、所得の大きさなどで決まります。

法人事業税の税率

株式会社や合名会社などの普通法人の場合、東京都では資本金額または出資金額が1億円を超えると「超過税率」が、そうでない場合は「標準税率」が適用されます。
※資本金額または出資金額が1億円以下でも年所得額が2,500万円超または年収入金額が2億円超であれば、超過税率の対象です。

また資本金額と出資金額のどちらかが1,000万円未満であれば、軽減税率が適用されます。
令和2年4月1日以降の事業年度における軽減税率適用後の税率は、以下のとおりです。

標準税率 超過税率
年400万円以下の所得 3.5 3.75
年400万円を超え年800万円以下の所得 5.3 5.665
年800万円を超える所得 7.0 7.48

※参考:東京都主税局「法人事業税・法人都民税

軽減税率が適用されない法人の場合、所得にかかわらず上記表の「年800万円を超える所得」が法人事業税の税率となります。

地方法人税

地方法人税とは、法人が事業で得た所得に対して課せられる税金です。
平成26年(2014年)の税制改正で、新たに創設されました。
名前に地方とありますが、法人税と同じく国税です。

地方法人税の計算式は「法人税額×税率」です。
税率は、一律10.3%となります。

消費税

法人が不動産を売却すると、消費税の納税が発生するケースもあります。

土地のみの売却は「権利の移転」とみなされるため消費税はかかりません。
一方で建物の売却は「付加価値を生む取引」として扱われるため、消費税の課税対象です。

買主が支払った消費税は、売主である法人が原則として国に納めなければなりません。
ただし消費税を納める必要があるのは、2期前の事業年度の課税売上高が1,000万円を超え

個人が不動産を売却した際に発生する税金

個人が不動産を売却した際には、利益(譲渡所得)に対して、所得税(いわゆる譲渡所得税)と住民税がかかります。
また令和19年(2037年)までは、復興特別所得税も納めなければなりません。
税額は、所得税額の2.1%です。

個人が不動産を売却したとき、譲渡所得に対する税金は「分離課税」で計算されます。
他の所得とは合算されず、譲渡所得に売却した不動産の所有期間に応じた以下の税率をかけて税額を計算します。

  • 5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税率30.63%+住民税率9%)
  • 5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税率15.315%+住民税率5%)
    ※上記は復興特別所得税を合算した税率

また売却した不動産の所有期間が10年を超えていた場合は、軽減税率が適用され、6,000万円以下の譲渡所得については税率が14.21%となります。
6,000万円を超える譲渡所得の税率は、通常の長期譲渡所得と同様に20.315%です。

個人が不動産を売却した際の税金について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

法人と個人における収益・経費の違い

個人が不動産を売却したときの所得税と法人が売却したときの法人税は、利益から必要経費を差し引いた所得に対して課税される点では共通しているといえます。
一方で個人と法人では、収益や経費の考え方が異なります。

法人の場合、事業や不動産売却などで得たすべての収入から、必要経費の合計を差し引いて求めた課税所得が課税の対象です。

一方で個人の場合、所得の種類は「事業所得」や「譲渡所得」「給与所得」など複数あります。
そのため所得の種類ごとに収入と経費を集計して、所得額を計算します。
また計算方法は、所得の種類によって異なります。

法人による不動産売却の経費の算出方法

税金の課税対象となる「利益」を求めるためには、不動産売却の経費を算出する必要があります。

法人の不動産売却でも、印紙代や不動産会社への仲介手数料などの経費が発生します。なかでも重要なのが「売却する不動産の経費としての価値」です。
不動産の経費としての価値とは、売却した時点での帳簿価額のことです。

土地部分については、造成などをしていない限り、取得時の価格と帳簿価格は同じです。

一方で建物の帳簿価額は、取得時の価格から減価償却累計額を差し引いた金額となります。
減価償却とは、時間の経過とともに低下したと考えられる価値を「減価償却費」として経費に計上する考え方です。

法人の不動産売却日はいつ?

法人が不動産を売却する際は「不動産売却日」の考え方が個人の場合とは異なります。
不動産売却日(譲渡日)の定義は「不動産の引き渡し日」が原則です。
しかし例外的に「不動産売却の契約を締結した日」を売却日とすることも可能です。
不動産売却の手順は下記のとおりです。

  • 契約書を作成する
  • 頭金・中間金などが支払われる
  • 最終金の支払いと同時に不動産が引き渡される

つまり契約書の作成または最終金の支払い日が、法人の不動産売却日として扱われます。
契約書の作成日と不動産の引き渡し日の事業年度が異なる場合、どちらを売却日として選ぶかによって収益や税金の計算が異なります。

ただし土地のみの売買では、次のうち早い方を採用します。

  • 代金の約50%を収受した日
  • 所有権移転登記申請日

法人が不動産売却をした際の税金対策

法人が不動産売却で利益を得ると、法人税や法人住民税などの負担が増えてしまいます。
税負担を抑えるためには、対策が必要です。

ここでは法人が不動産を売却したときの税金対策について解説します。

役職員への退職金に充てる

不動産売却代金を、役職員の退職金として支払うのも方法のひとつです。
役職員に支払った退職金は、損金に参入されるため、法人の利益が減って税負担を軽減できます。

受け取った退職金は、所得税や住民税の課税対象です。
ただし課税対象になるのは(退職金の支給額-退職所得控除)×1/2です。
退職所得控除は、以下のとおり勤続年数に応じて決まります。

  • 勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
    ※下限80万円
  • 勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数 – 20年)

例えば勤続年数が30年である場合、退職所得控除は800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円となります。
退職金の支給額が2,000万円である場合、課税対象になるのは(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円です。

よって2,000万円の退職金を受け取ったとしても、課税対象はわずか250万円であり、ほとんどが非課税となります。
そのため役職員の退職に合わせて不動産を売却し、売却金を原資に退職金を支給することで、総合的な税負担を軽減できる可能性があります。

設備投資をする

不動産の売却代金を、以下のような設備投資に充てて税負担を軽減する方法もあります。

  • 新規で不動産を購入する
  • オフィスの壁や床材を張り替える
  • パソコンやOA機器などを購入する
  • 社用車を買い換える など

設備投資をするときは「中小企業投資促進税制」の利用を検討するのがおすすめです。
中小企業投資促進税制を適用できると、1台160万円以上の機械装置や1つにつき70万円以上のソフトウェアなどを取得すると、以下の特別償却または税額控除が受けられます。

  • 取得価額の30%を特別償却
  • 取得価額の7%を税額控除

特別償却は、通常の減価償却費に加えて一定の金額を経費(損金)に計上できる制度です。
一方で税額控除は、法人税額から一定の金額を直接差し引いてくれます。

中小企業投資促進の対象になるのは、青色申告を適用し所定の要件を満たす中小企業や農業協同組合などです。
また制度を適用するためには、令和5年(2023年)3月31日までに制度の対象になる機械や装置などを取得する必要があります。

まとめ

法人が不動産を売却して得た利益は、法人税や法人事業税などの課税対象です。
また法人の場合、不動産の売却だけでなく会社経営におけるすべての損益を合算したうえで税額が計算されます。

法人が不動産を売却したときに課せられる税金の種類や税額の計算方法などは、専門知識がなければ理解は困難でしょう。
そこで不動産売却を検討しているのであれば、法人との取引実績が豊富な不動産会社に相談することをおすすめします。
(執筆者:品木 彰)

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