中古住宅は価格面でメリットが大きく「マイホームを購入する際に、約7割の人が最初に中古住宅を検討している」という調査データもあります。(参考:アットホーム株式会社の調査)
しかし築年数を重ねた物件では「購入金額は妥当なのか」「住宅に欠陥はないか」と、不安に思う人もいるでしょう。
この記事では、中古住宅のメリットやデメリット、中古住宅購入の流れをステップごとに解説します。
さらに購入時に注意するべきポイントについても、詳しく紹介します。

遠鉄の不動産・中遠売買ブロック長 岸本 圭祐(きしもと けいすけ)
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、カラーコーディネーター、ファイナンシャルプランナー3級
中古住宅のメリット
中古住宅を選ぶメリットは、以下の3点です。
- 価格が割安である
- 購入前に実物を確認できる
- 選択肢が増える
中古住宅は、新築物件よりも築年数が経過しているため安価です。
新築物件のように、価格に販売を促進するための広告費や人件費が上乗せされていないため、割安で購入できます。
また購入する前の建物の外観や間取りなどを、自分自身の目で確認してから購入できるのも中古住宅のメリットです。
中古マンションであれば、管理状況や住人の年齢層なども事前に確認できます。
さらに中古住宅は、新築住宅と比較して選択肢が多いことも魅力の1つです。
駅から近い場所や都心部などでは、すでに住宅がひと通り建っています。
新築住宅に絞って検討すると「駅から徒歩5分以内」「都心部に近い」など、好立地の物件は選択肢が限られてしまうでしょう。
中古住宅も含めて検討することで、予算内で立地の良い物件を見つけられる可能性が高まります。
中古住宅のデメリット
中古住宅を購入するデメリットは、以下の3点です。
- 修繕コストが高い傾向にある
- 住宅ローン控除の控除額が少なくなる場合や控除を受けられない場合がある
- 仲介手数料の支払いが必要になる場合がある
中古住宅は、新築住宅よりも建物本体や設備が古いため、修繕や買い替えなどにコストがかかりやすいです。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ人が所定の要件を満たしている場合に「年末時点の返済残高の1%」を所得税や住民税から差し引いてくれる制度です。
控除額は、年間40万円が上限です。
しかし売主が個人である中古住宅を購入した場合、控除額の上限は年間で20万円に減ってしまいます。
また購入する中古住宅の築年数や耐震基準などが、要件を満たしていないとそもそも住宅ローン控除を利用できません。
さらに不動産仲介会社を通じて中古住宅を購入した場合、仲介手数料の支払いが必要です。
仲介手数料は、不動産会社によって異なりますが、法律で定められた上限額の「物件価格×3%+6万円(税抜)」であるケースが一般的です。
中古住宅購入の流れ
中古住宅とは一般的に、過去に人が入居したことがある住宅、または建築後2年を経過している住宅を指します。
購入検討のタイミングには、まだ売主が住んでいるというケースも少なくありません。そのため中古住宅と新築住宅では、購入の流れが異なります。
中古住宅購入の基本的な流れは次のようになります。
- 中古住宅の情報収集
- 気になる物件を内覧
- 購入の申し込み
- ローンの事前審査
- 重要事項説明・売買契約
- ローンの契約
- 残代金の決済と引渡し
それぞれのステップを詳しく説明します。
1.中古住宅の情報収集
まずは不動産検索サイトで物件情報を見たり、不動産会社から物件情報を紹介してもらったりなど、情報収集から始めましょう。
中古住宅を探すときには、以下の項目を明確にすることが大切です。
- 予算
- 間取り・面積
- 内装のイメージ
- 立地条件
それぞれの項目が明確になったら、優先順位をつけましょう。優先順位があることで、不動産会社も希望に沿った物件を紹介しやすくなります。
2.気になる物件を内覧
気になる中古住宅が見つかったら、仲介をおこなう不動産会社に連絡をして内覧を申し込みます。
中古住宅は売主が居住中のことも多いため、不動産会社を通じての連絡が必須です。
内覧では間取りや日当たり、収納の場所を確認しましょう。
中古住宅は、すでに建物が完成しているため現物を確認できます。売主が居住中の場合は、新築のモデルルームと比べると生活感を感じるかもしれません。
しかし「実際の暮らしをイメージしやすい」というメリットでもあります。
午前と午後では、日当たりや周辺の交通量も変わるため、内覧は複数回おこなうことをおすすめします。
不動産会社と相談をしながら、内覧のスケジュールをたてましょう。
3.購入の申し込み
内覧をして購入の意志が固まったら、次は売主への購入申し込みです。
「購入申込書」を記入し、不動産会社経由で売主へ提出します。
購入申込書には、主に次の項目を記載します。
- 申込日
- 買主の情報(氏名、住所、捺印)
- 購入希望条件(売買価格、手付金、売買契約日、引渡し日、住宅ローンに関する情報など)
購入申込書は契約書ではありません。
しかし何度も修正するのは望ましくないため、売買価格などは申込書を記載する前に不動産会社を通じて交渉しましょう。
4.ローンの事前審査
住宅ローンを利用する場合は、ローンの事前審査をおこないます。
買主の収入、勤務年数、その他のローンの有無を申告し、金融機関から仮承認を得ましょう。事前審査の期間は、数日~1週間が目安です。
5.重要事項説明・売買契約
売買契約を締結する前には、必ず「重要事項説明」を受けましょう。
重要事項説明とは、宅地建物取引士から物件の詳細情報、売買の条件に関する説明を受けることです。
重要事項説明で不明なことがあれば、不動産会社に確認しましょう。
説明内容に相違がないことを確認したら、売買契約の締結に進みます。契約書の内容を買主、売主の両者で確認し、署名・捺印をおこない手付金を支払います。
重要事項説明と売買契約は同日でも可能ですが、重要事項説明の内容をあらかじめ把握するためにも別日で設定するほうがいいでしょう。
6.ローンの契約
売買契約を締結したら、住宅ローンの本審査を受けます。
事前審査と同様に信用調査がおこなわれますが、本審査では住民票や源泉徴収票、住民税の課税証明書、売買契約書などが必要です。
本審査で問題がなければ、1~2週間ほどで住宅ローンの承認通知が届きます。
承認通知が届いたら新住所の住民票や印鑑証明を持参して、金融機関で住宅ローンの契約を行います。
住宅ローンの本審査、契約では必要な書類が多岐にわたるため、事前にチェックしておきましょう。
7.残代金の支払いと引渡し
買主は残代金を支払い、売主は土地建物を引渡します。
引渡しには買主、売主、仲介の不動産会社、司法書士、金融機関担当者がそろうことが一般的です。
関係者が集まった状況で、次の3つを同時に進めます。
- ローンの実行
- 残金の振込
- 登記申請
最後に売主から買主へ、物件の鍵を渡して完了します。
中古住宅購入時の注意点
中古住宅の購入を検討する場合、物件を探すときや内覧をするとき、売買契約を結ぶとき、それぞれの場面で注意すべき点があります。
物件探しの注意点
中古住宅を探す際は、不動産会社に問い合わせたり不動産情報サイトを閲覧したりして積極的に情報を収集しましょう。
小まめに情報をチェックする
売りに出されている中古住宅は、立地や築年数、間取りなどがすべて異なっています。
気に入った物件を見つけても、問い合わせたときにはすでに売れてしまっていた場合、同じようなスペックの物件が必ずしも売りに出されるとは限りません。
常に最新の情報を収集し、気になる物件があれば積極的に内覧するのがおすすめです。
耐震性能を確認する
また中古住宅を購入するときは、耐震性能を必ず確認しましょう。
1981年6月以降に建てられた住宅は「新耐震基準」が適用されて、震度7程度の地震が発生したとしても耐えられる構造です。
しかし1981年5月以前に建てられた住宅には、旧耐震基準が適用されており震度5程度の地震にしか耐えられないとされています。
旧耐震基準の住宅は、新耐震基準の物件よりも地震によって倒壊するリスクが高いです。
また住宅ローン控除を利用できないのも、旧耐震基準が適用された住宅のデメリットです。
内覧時の注意点
内覧時は、建物に不具合がないかを入念に確認しましょう。
必ず現地を確認する
壁や水回り、収納場所などを目視で確認し、劣化具合や損傷箇所の有無をチェックします。
ドアや窓、収納扉の開閉に支障がないかを、実際に開閉して確認することも大切です。
住宅の外観については、外壁や屋根のひび割れ、塗装の剥がれなどをチェックすると良いでしょう。
加えて、内覧の前後で物件の周辺を歩いたり車で走行したりして、学校やスーパー、病院などの位置を確認すると、購入後の生活をイメージしやすくなります。
ホームインスペクションを活用する
中古住宅では、シロアリ被害や雨漏りなど、目に見えない欠陥が存在する場合があるため、ホームインスペクションを受けておくと安心です。
ホームインスペクションとは、住宅診断士が住宅の劣化状態や欠陥の有無などを調査し、改修費用の見積もりや、修繕箇所のアドバイスなどを受けらられるサービスです。
売りに出す前に、売主がホームインスペクションを受けている場合は、報告書を見せてもらいましょう。
売買契約時の注意点
売買契約において、とくに理解するべきなのが「契約不適合責任」です。
契約不適合責任とは、売買契約を結んで取得した不動産が、約内容と合っていない場合に、売主が責任を追うことです。
例えば、中古住宅を購入した後に、 売買契約書には記載されていなかった雨漏りが発覚した場合、買主は売主に対して修繕費用の支払いや代金の減額などを請求できます。
売買契約書には、売主が負う契約不適合責任の範囲や期限などが記載されているため、確認したうえで契約することで、購入後のトラブルを回避しやすくなります。
引渡し時の注意点
空き家となっている中古住宅を購入した場合、契約から1か月程度で引渡されます。
しかし売主が居住中の物件を購入した場合、引き渡されるのは売主が退去したあとです。
売主の住み替え先が建築中である場合、引渡しまでに数か月かかることもあります。
入居を開始する時期に希望がある方は、売主と引渡しのタイミングを入念に話し合っておきましょう。
費用に関する注意点
新築住宅よりも割安であるとはいえ、中古住宅を購入するためには多額の資金が必要です。
物件代金以外の諸費用も計算する
中古住宅の購入時に、物件の購入代金以外で支払いが必要となる費用の例は、以下の通りです。
内訳 | |
購入時に必要な費用・税金 | ・頭金 ・登記費用(登録免許税・司法書士への報酬) ・印紙税 ・固定資産税・都市計画税の清算金 ・不動産取得税 ・手付金 ・仲介手数料 |
住宅ローンを組む際に必要な費用 | ・事務手数料 ・保証料 ・印紙税 ・損害保険料(火災保険料・地震保険料) |
その他の費用 | ・リフォーム費用 ・引っ越し費用 ・家具・家電などの購入費用 |
諸費用の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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売買契約後にキャンセルしても手付金は戻ってこない
手付金とは、住宅の売買契約が成立したときに、買主が売主に対して支払う金銭です。
売買契約から引渡しまでのあいだに買主が契約をキャンセルした場合、支払った手付金は売主に没収されます。
買主に物件が無事に引き渡されたとき、手付金は売買代金に充てられるのが一般的です。
手付金額は、売買代金の5〜10%程度が目安です。
仮に売買代金が2,000万円の場合、手付金の目安は100〜200万円となります。
中古住宅を検討する際は、購入に必要な費用総額の目安を計算したうえで、資金計画を立てましょう。
中古住宅購入後、リフォームが必要な場合
リフォームやリノベーションを検討している人は、引渡し前にリフォーム会社と一緒に内覧をおこない、入居までのスケジュール、リフォーム費用を確認しましょう。
アットホーム株式会社の調査によると、中古住宅購入者の約8割が購入段階からリノベーションを前提にしています。
築古の物件ほど外壁や水回り設備などが劣化するため、リフォームの必要性が高まり費用は高額になっていきます。
とくに築20年を超えた物件は、水回り設備の交換やクロスの張り替え、外壁の塗装などが必要となるでしょう。
初めからリフォームを考えている人は、リフォームと物件購入の両方をワンストップでサポートしてくれる不動産会社を選ぶのも選択肢の1つです。
中古住宅のリフォーム・リノベーションについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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中古住宅購入で使える補助金や税金控除
売主が個人である場合、控除額は減額されるものの、所定の要件を満たせば住宅ローン控除の利用が可能です。
リフォーム工事を行い、住宅の耐震性能やバリアフリー性能などが一定の基準を満たした場合「リフォーム減税」を利用して、所得税の控除を受けられます。
ただし住宅ローン控除とリフォーム減税は、多くの場合で併用できないため、利用を検討する際は要件を入念に確認しましょう。
中古住宅を購入する場合、売主が宅地建物取引業者であれば、年収をはじめとした要件を満たすと「すまい給付金」を受給できます。
例えば、不動産会社が売主から物件を買い取ってリフォームをして、再販しているものを購入した場合は、すまい給付金を受給して金銭的な負担を軽減できる可能性があるのです。
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また一定の要件を満たす中古住宅を購入した場合、所定の申請をすると不動産取得税の軽減措置が受けられます。
不動産取得税とは住宅の購入時に支払う税金です。
各市町村が決める不動産価格である「固定資産税評価額」に、税率をかけて税額が計算されます。
軽減措置が適用される場合、新築された年月日に応じて決まる控除額が、固定資産税評価額から差し引かれるため、不動取得税の税負担が軽減されます。
まとめ
中古住宅は新築に比べ、価格的にメリットが大きい物件です。
すでに建物ができているため入居前に現物を確認でき、暮らしをイメージしやすいでしょう。
空き家になっている中古住宅は、購入から引き渡しまで1か月程度と短期間で進むこともあり、早くマイホームを手に入れたいと考えている人にとっては嬉しい物件でしょう。
しかし築年数を重ねた建物には、目に見えない欠陥が潜んでいる可能性もあります。
中古住宅購入の際には、信頼できる不動産会社と一緒に住宅の状態、購入までの流れをしっかり確認しましょう。
(執筆者:戸塚ナオ)